2012年8月18日土曜日

今日の本

木村尚三郎 著
『年寄りはなぜ早起きか』
潮出版社

65歳になり高齢者の仲間入りを無事に果たしたことをきっかけに、”年寄り”、”老人”、“高齢者”といった語がタイトルについている本をみつけると、できる限り読んでみることにしている。この本も、その1つである。

この本を選んだ理由は、タイトルに記されているように年寄りの睡眠について知りたかったからである。ところが目次を見たとたん、これは睡眠の本ではないことがわかった。

考えてみれば、筆者の木村尚三郎氏はフランス中世を中心にヨーロッパに視点をおいた文明に関する専門家である。睡眠の専門家ではない。

最初の目論見ははずれたが、木村氏の豊富な経験から引き出される数々の話題から、これまで知らなかったことを学ぶことができた。

たとえばトラヴェル(旅)である。この言葉の語源はトリパリウムという古代ローマ時代の刑具であることを知った。さらに、中世ヨーロッパでは旅を死刑と同格の刑罰として科していたそうである。

あるいは、次のような文章から日本の美しさを知ることもできた。
「確かに日本の美しさには、音がない。ダン、ダン、ダンとドアをノックして入ってくる欧米流に対し、日本の小笠原流は黙ったまま襖を三度に分けてあけ、入る。一目はほんのちょっとだけあけ、「入りますがよろしいでしょうか」のサインを送る。二度目はもう少しあけて、目で相手の状態を確認する。そして三度目に大きくあけて、入る。「日本流の美しいコミュニケーションです」と先代の32世宗家、故小笠原忠統氏に伺って、いたく感じ入ったことがある。」

この本は次の4章で構成されている。どの章でも氏独自のうんちくに触れることができる。

第1章 この国をみつけなおす
第2章 「地球大交流時代」に生きる
第3章 ”いのち”を噛みしめる
第4章 温故知新―先人に学べ

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