2013年6月30日日曜日

年をとると衰えやすい体力は何?

中日ドラゴンズの谷繁選手が、2013年6月29日の試合で、2831試合出場を達成した。歴代2位の記録である。出場試合数の日本記録は、野村克也氏の3017試合である。

こういった記録は長年の積み重ねの結果であり、記録を達成した選手はスポーツ選手としては高齢である。谷繁選手は42歳であった。野村氏は、45歳まで現役選手であった。

ところで、年齢が40歳を過ぎれば、どの選手であっても体力の低下が起きてくる。体力には、筋力、敏しょう性、持久力、バランス、柔軟性などがある。すべての体力が同じように衰えるのではない。加齢にともなって衰えやすい体力と衰えにくい体力とがある。

筋力と敏しょう性は、40歳代でもピークのときの90パーセントほどのレベルを保っている。ところが、柔軟性とバランスは40歳代ではピークのときの60パーセント程度しかない。40歳過ぎでも現役選手として活躍するには、柔軟性を保つためのストレッチングとバランスに必要な体幹筋の衰えを防ぐ筋トレが必要ということがわかる。


2013年6月23日日曜日

『若さを保つ51章』 新著発売

新しい著書が発売されました。中日スポーツ紙に10年間にわたって連載してきた記事から、51の話題を選んでまとめた本です。


最近の通信販売のCMで、よく見かける場面がある。中高齢者の年齢に?印がつけられていて、その人の見た目の若さを話題にしたあと?印がはずされると実年齢が映し出される。見た目は50歳代なのに実年齢は70歳代である。こういったCMが流れる背景には、若返りを願っている人が多いことがある。テレビCMだけではない。最近の出版物にも若返りを扱った者が多い。

年齢を重ねれば老いが起こるのが自然に理である。若返りを願うのは、自然に理に逆行することである。自然の流れに逆らえば、身体に無理が起こって健康障害につながることは容易に考えられる。

自然の流れに身を任せ、年齢を重ねるのにつれて老いることを素直に受け止める生き方が大切だと思う。この本は、老いを少しだけ遅らせることで、若さを保つための生き方や運動のしかたを紹介している。

手にとってお読みください。

湯浅景元 著
『若さを保つ51章』 中日新聞社 1,365円

2013年6月18日火曜日

足を活かす

野球の走塁は、基本的に足が速いほど有利である。そうであるなら、スポーツの世界でもっとも速く走る陸上競技100mのランナーに走塁させよう、と考える人がいても不思議ではない。現に、男子100mで10秒1の日本記録を樹立した飯島秀雄氏を、走塁のスペシャリストとしてロッテオリオンズが入団させたことがあった。

プロ野球に在籍した1969年から1971年の3年間の成績は、代走として117回起用され、成功した盗塁は23回、盗塁死は17回、けん制しは5回であった。期待された走塁のスペシャリストとしては、満足のいくものではなかった。

しかし、飯島氏が塁にいることが功を奏してこともあった。飯島氏を塁に置いたときの通算のチーム打率は.424、出塁率.494と好成績であった。日本一の走力をもつ飯島氏が塁にいることが、相手チームに大きなプレッシャーをかけたためであろう。

日本プロ野球界で走者として最高の選手は福本豊氏である。『世界の盗塁王』の異名をもち、通算盗塁数は歴代1位の1065個である。

現役中の福本氏は、速く走るために実際のシューズより5mm小さなシューズを履いていた(『スポーツシューズの本』、三水社)という。小さめのシューズを履くと、指先を押しつけてすぼめたような形にする。そうすると、地面を蹴る力は一点に集中できるので、大きな推進力を生み出すことができる。

いま私の教え子の一人は、足の研究をしている。足は体の中でも小さな部分であるが、この小さな足が全身を動かすための推進力を生み出す原点だといえる。速く走るためには、脚力が必要であるが、それと同程度に足の存在も重要なはずだ。脚力+足の活用度が、走力を決定するような気がする。

2013年6月8日土曜日

投球と胸の張り

投手がボールを投げるとき、上半身を反らすように胸を張る。肩関節を中心に上腕の可動を広くできるからである。

胸の張り具合を上腕の動きとの間には、独特の関係が認められている。背を丸めた姿勢で腕を真上に上げると、高く上げることができない。ところが反り身気味に胸を張った姿勢で腕を真上に上げると、高く上げることができる。

ある関節の運動は、体の別の部分の姿勢に影響されているのである。このことを理解していないと、腕が高く上がらないからと肩関節を動かすことばかりに目が向いてしまう。ときに肩を無理に動かして、肩痛などを起させることもある。

肩関節を中心に上腕を大きく動かしたければ、肩の動きに注目する前に胸の張り具合に注意を向けるのがよい。

ある関節の運動は体の別姿勢と連動しているのである。

運動前後の体重差チェックで熱中症予防

熱中症が起きやすい季節である。

熱中症は、尊い人命を奪うことがある。それだけに、熱中症予防には真剣に取り組まなくてはいけない。とくにスポーツを行う人は、汗によって体内の水分が大量に失われることが多いだけに、熱中症対策には十分に配慮することが必要である。

熱中症対策の代表的な方法は、水分を十分に補給することである。しかし、十分な量となると、どれほどでよいのか見当がつかい。そういう場合、運動前後の体重差を目安にする方法が勧められる。

たいては、運動後の体重の方が運動前より少なくなる。運動中に汗などで体内の水分が減るからである。運動前後の体重差が大きくなるほど、体内から失われた水分量が多いことを表す。

水分を失うことで起こる体重の低下の程度と症状の関係を表に示した。体重の減少が大きくなるほど、重大な症状が起こりやすくなる。


運動中に体重を計ることが大変だということは十分にわかる。でも大切な人命を守ることを考えれば、運動中にときどき体重を計って水分の補給量が十分かどうかを判断することは決して無駄とは言えない。

2013年6月6日木曜日

サプリメント

お手軽なものが好まれる。健康についてもその通りで、時間と努力を必要とする運動よりも、手軽なサプリメント(健康補助食品)で健康になろうとする人が多い。

サプリメントには、おもに3つの効果があると考えられている。1つは、栄養の補給、疲労の早期回復といった健康面での効果である。2つ目は、筋力の向上や筋量の増加という体力面での効果である。そして3つ目は、基礎代謝や脂肪代謝の促進というエネルギー面での効果である。

スポーツ関係者の間で、最近、話題になっているアミノ酸を含むサプリメントは、主に疲労の早期回復という目的で利用されることが多い。

アミノ酸は筋肉をつくっている成分である。筋肉をつくっている必須アミノ酸は20種類ほどあるが、そのうち最も多いのが分岐鎖アミノ酸(BCAA)である。このBCAAが疲労回復を早める働きをしている。

BCAAが疲労回復に及ぼす効果については、いくつかの研究で報告されている。たとえば、杉田正明氏(三重大学教授)は、BCAAを中心としたアミノ酸をとると疲労回復が早まることを報告している。さらに、アミノ酸摂取により強い練習後であっても3~5日後には同じ強度の練習ができる可能性がある、とも述べている。

アミノ酸を含むサプリメントは疲労回復に効果があるといわれるが、サプリメントはあくまで「補助食品」であることを忘れていけない。日々の食事から摂る栄養素の不足分を補うのが、サプリメントの本来の姿である。


サプリメントの利用でもう1つ注意することは、治療薬との併用である。
野田勉氏(東大阪大学短期大学部健康栄養学科)によると、フェルにアラニンなどの中性アミノ酸は、パーキンソン病治療薬・レポドバ(L-DOPA)との併用によって振せんや硬直などがおこる可能性を示唆している。

心配なときは、薬剤師や医師と相談してサプリメントの利用の可否を決めるのがよさそうだといえる。

2013年6月2日日曜日

仙骨座り

大学の授業や講演会では、聴講している人は椅子に座っている。話をしながら座っている人の姿勢をそれとなく観察していると、お尻を座席の前の方にのせて足を前に投げ出し、背もたれに背中をあずけ、頭を前に倒した姿勢が目につく。


こういう座り方は「仙骨座り」と呼ぶことがあり、仙骨の部分で体重を受ける。仙骨は、背骨と尾てい骨の中間にある骨である。

仙骨座りは、腰と首にかかる負担が大きくなることがある。そのために、首や腰の痛みを起しやすくなる。

「仙骨座り」をするのは、スポーツ選手にも見られる。試合中にベンチで椅子に座って待機している選手が「仙骨座り」をしているのを見た人は多いことだろう。

スポーツ選手たちは、トレーニングのときには最前の注意を払って体に大きな負荷をかける。しかし、トレーニングから解放された日常の生活では体に加わる負荷をできる限り小さくして体をいたわることが肝心だと考える。

椅子に座るときは仙骨と背骨を椅子の背に当て、腰とひざをほぼ直角に曲げた姿勢をとるのがよい。


ただし、腰椎にかかる負担は立位よりも座位の方が大きいと言われているので、椅子に長時間座り続けることは避けた方がよい。