2013年6月18日火曜日

足を活かす

野球の走塁は、基本的に足が速いほど有利である。そうであるなら、スポーツの世界でもっとも速く走る陸上競技100mのランナーに走塁させよう、と考える人がいても不思議ではない。現に、男子100mで10秒1の日本記録を樹立した飯島秀雄氏を、走塁のスペシャリストとしてロッテオリオンズが入団させたことがあった。

プロ野球に在籍した1969年から1971年の3年間の成績は、代走として117回起用され、成功した盗塁は23回、盗塁死は17回、けん制しは5回であった。期待された走塁のスペシャリストとしては、満足のいくものではなかった。

しかし、飯島氏が塁にいることが功を奏してこともあった。飯島氏を塁に置いたときの通算のチーム打率は.424、出塁率.494と好成績であった。日本一の走力をもつ飯島氏が塁にいることが、相手チームに大きなプレッシャーをかけたためであろう。

日本プロ野球界で走者として最高の選手は福本豊氏である。『世界の盗塁王』の異名をもち、通算盗塁数は歴代1位の1065個である。

現役中の福本氏は、速く走るために実際のシューズより5mm小さなシューズを履いていた(『スポーツシューズの本』、三水社)という。小さめのシューズを履くと、指先を押しつけてすぼめたような形にする。そうすると、地面を蹴る力は一点に集中できるので、大きな推進力を生み出すことができる。

いま私の教え子の一人は、足の研究をしている。足は体の中でも小さな部分であるが、この小さな足が全身を動かすための推進力を生み出す原点だといえる。速く走るためには、脚力が必要であるが、それと同程度に足の存在も重要なはずだ。脚力+足の活用度が、走力を決定するような気がする。

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