2014年5月16日金曜日

後追い研究

バイオメカニクスと生理学と解剖学の知識を主に利用して、一流スポーツ選手たちの体力と技術を解き明かすことが、私の主要な研究課題である。このような研究に取り組むようになって、かれこれ40年が経つ。

40年前は、スポーツ選手の動作を分析するために撮影した動画(当時は16mmフィルムを用いて撮影していた)をプロジェクターを使って前方の磨りガラスにテープでとめたトレーシングペーパーに1コマずつ投影し、投影された選手の体の輪郭を鉛筆などでたどり、その描画から関節角度などを測って動作の分析を行っていた。ときには、1つの動作を分析するために数百枚の描画を分析することもあった。いまは、コンピュータを利用した簡単で即効性のある測定方法が開発され、作業が楽になった。

私が行っている一流選手の体力と技術の解明の研究は「後追い研究」だと考えている。一流のスポーツ選手が出現すると、その選手の体力や技術を解明する。別の一流選手が現れると、その選手を追いかけるように分析をはじめる。私の研究が先取りとなり、一流選手を育て上げたという例は、これまでにはない。あくまでも「後追い研究」なのである。

できれば、私の研究結果に基づいて選手を育成し、一流のレベルまで育て上げられたい、と夢見ることもあるが、はやり夢である。現実は、「後追い研究」なのである。

これからも「後追い研究」に徹して、一流選手の後を追いかけながら研究を続けていこうと思う。「後追い研究」の成果を蓄積し、選手育成に役立つ手がかりを提供できれば、それだけも私にとって満足できることである。

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