2014年5月20日火曜日

Body Dimensions

深代千之著『日本人は100メートル9秒台で走れるか』(祥伝社、2014年、初版第1刷)を読み始めた。

面白い。何が面白いかというと、100メートル疾走を話題の中心に置いて、人間が最高の運動能力を発揮するための条件をスポーツ科学、特にバイオメカニクスの知識を利用して、謎解きのように説明していることである。取り上げた条件がなぜたいせつなのかを、ていねいに解き明かしている。ありふれた言葉であるが、まさに推理小説のようである。

ところで、この本のなかに次のような記述があった。

<スプリンターは、単純に「大きいほうが有利」とは言えません。これは同じ体形で身長が高くなったとすると、筋力は身長の二乗に比例する横断面積の分だけ増加しますが、体重は身長の三乗に比例する体積分が増加するという「スケール効果」があって、筋力が追いつかなくなるからです。」(同掲書、p.26)。

身長が高くなると筋力は増加するが、それ以上に体重が増加するために、結果として速く走れないことになる。

この一文を読んだとき、40年ほど前に読んだPer-Olof Astrand著 Textbook of Work Physiologyのことを思い出した。

この本の第7章は、"Body Dimensions And Muscular Work"について述べている。身長を1とした場合、体力は身長の何倍に相当するかを述べている。

疾走時のストライドの長さは身長に比例する。
筋力、筋の断面積は身長の2乗に比例する。
体重、血液量、ヘモグロビン量、心臓の容積などは身長の3乗に比例する。

この部分に出会ったとき、私は大変な関心を持ち、熱心に読んだ記憶が蘇る。当時、こんな計算をしたことを思い出した。

身長が160cmから5cm伸びて165cmになったら、大腿部の太さは何倍になるか。


大腿の太さは(165÷160)=1.03倍になった。

面積は身長の2乗に比例するので、

大腿部の太さ=1.03の2乗=1.06倍となる。


身長が伸びれば、その伸び率よりも大きな伸び率で大腿部は太くなる、ということである。

身長を基準に物事を考えるBody Dimensionは、今でも私の関心を引く。

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