フィギュアスケートの無良崇人選手が、私の研究室の勉強会に参加したとき、「空中で回転しているときの顔の写真だけは雑誌に載せてほしくない」と教えてくれたことがあった。
無良選手が嫌がっていたのは回転中の目である。空中で回転しているとき、両方の黒目は回転方向側の目尻に寄っている。無良君が嫌がる気持ちがよくわかる。しかし、回転中に回転側に目を寄せるのは、回転後に目を回さないためである。
高速で回転している人の目玉は、左右にブルブルと振動している。これを“眼振”という。回転が終わっても“眼振“はすぐにおさまらず、しばらく眼振が続ける。この間に「目が回る」と感じ、バランスが乱れてしっかり立つことができなくなるのである。
無良選手が4回転ジャンプのあとバランスよく着氷して次の演技につなげるためには、着氷後に眼振を起こさないようにすればよい。そのためには、回転中に目を回転側の目尻に寄せるのである。
空中で回転している体より早く眼球を回転方向に向ければ、回転中や回転後の眼振が少なくなり安定した着氷ができる。
4回転ジャンプの成功の鍵は目の動きにある、とも言えるかもしれない。
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