2023年4月16日日曜日

メモ(41) 嚥下をおろそかにしない

 口に入れたものを飲みこみとき、いちいち「さあ、これから飲み込むぞ」と、意識して自分に言いきかせて飲み込む人は少ない。

噛むことに注意を払う時は、そのことに集中しているのに、噛んだものを飲み込むのは自動的な作業のように思っているのだ。要するに「よく噛む」ことは、うるさいほど推奨されるのに、噛んだものを飲みくだす嚥下というプロセスは、ほとんど関心を払われない。


「噛むこと」は10回噛もうと100回噛もうと、そのことはべつに生命の危機にむすびつくことはない。噛む回数が少なかったりしても、精々、消化不良をおこしたり、胃の調子がおかしくなったりするくらいだろう。


しかし、「飲み込む」ことは、そうではない。誤嚥はまちがいなく命にかかわる重大事なのだ。


【出典】 五木寛之 『シン・養生論』 幻冬舎新書 株式会社幻冬舎 2023年3月30日 第1刷 47-48頁

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