2023年4月8日土曜日

メモ(10) 小さくなる親

 個人差はあるにしても、人間に限らず、すべての生物は老年期に入れば衰え始め、それは子供の見る親の場合でも変わらない。変わらないどころか、自分の親だからこそ衰えがはっきり判り、生命の終わりの然程遠くないのを知る。成年時代の力はなく、重い物を持とうとしても容易に腰が切れない。そしてこうした衰えは精神にも可なり顕著に現われ、根気がなくなり、記憶力や判断力もあやしくなり、そのために精神の均衡が破れて苛立ったり、逆に諦めが早くなったりする。詰りは総合的に人間存在としては小さくなる。

【出典】 串田孫一 『小さくなる親』: 鶴見俊輔・編『老いの生きかた』 ちくま文庫 1999年5月20日 第二刷 p.158 

0 件のコメント: